概要
トランジスタやダイオードの静特性の測定ができる簡易的な半導体カーブトレーサーを作成してみました。簡易的なものなのでガチガチの測定はできませんが、趣味でちょこっと特性を知りたくなったときに便利なものに仕上がりました。
はじめに
みなさんの部品箱の中に得体の知れない半導体って眠ってたりしませんか?私の場合、秋月のお楽しみ袋に入っていた謎のダイオードやAliexpressで購入した怪しいトランジスタなどがそこそこ眠っています。これらの部品の特性を測定するには電源を用意して回路を組んで測定して…と中々手間がかかってしまいます。特にトランジスタの特性を測定するには電圧源と電流源を用意しなければならないので大変です。そこで、トランジスタやダイオードの特性を自動でいい感じに測定できる簡易カーブトレーサーを自作しようと思いました。
設計製作
仕様
本稿で作成する簡易カーブトレーサーの仕様は次のようになっています。トランジスタ用に回路を設計しますが、エミッタ・コレクタ間にダイオードを接続すればダイオードの特性も測定することができます。
- : 0 V〜5 V(NPN)、0 V〜-5 V(PNP)
- : 0 mA〜5 mA(NPN)、0 mA〜-5 mA(PNP)
- : 0 mA〜約500 mA(NPN)、0 mA〜約-500 mA(PNP)
回路設計
マイコンを含むメイン回路です。マイコンをはじめとした半導体が不足しているので、STM32F303K8の(ほぼ)全てのピンを使い過不足ないようにしました。
NPN側の測定回路です。オペアンプで定電流回路と定電圧回路を構成するだけの簡単な回路となっています。微小電圧および微小電流を扱うのでオフセット電圧が小さい、いい感じのオペアンプを使います。本稿ではADA4522を採用しました。
PNP側の測定回路もNPN側と同様の回路になっています。
AD/DA回路です。コレクタ電流の測定ゲインを2種類用意してダイナミックレンジを確保しつつマイコンのADCポートの保護を行います。DACのマイコン側ラベルがNPNとPNPで分けられていますが、基板設計の都合で変更がありベース電流指令値とエミッタコレクタ間電圧指令値が正しいものとなっています。(修正が面倒だったのでラベルがそのままとなっています)
最後に電源回路です。測定回路で使用するMOSFETを確実にOFFにするために15 V→12 Vの若干降圧する回路と負電圧を生成する回路が必要となります。加えてマイコン周りで5 Vと3.3 Vが必要になります。
組み立て
組み立て後の基板はこのようになりました。ZIFソケットにトランジスタを刺して測定します。調節用のMOSFETとレギュレータは測定条件によっては発熱するのでヒートシンクを取り付けます。
使ってみた
データをCSV形式で出力し、MATLABを使って描画しました。
まずは部品箱にあった怪しい2SA1015(赤線)/2SC1815(黒線)の特性です。ベース電流は0.1 mA刻みとなっています。コレクタ電流が30 mA付近となるポイントで変な段がありますが、これはコレクタ電流ゲインの切り替えに起因するものと考えられます。
次に同じトランジスタを用いて特性を測定しました。コレクタ・エミッタ間電圧は1 V刻みとなっています。温度を一定にする機構がないためかプロットがぐちゃぐちゃになってしまいました。
最後に部品箱にあった謎のダイオードの順方向特性です。綺麗なカーブが得られました。
まとめ
本稿では簡易的なカーブトレーサーについて設計および製作し、測定結果について簡単に紹介しました。ハード的にはまだ課題がある一方で、趣味程度なら使えなくはないものに仕上がったと思っています。本稿での仕様だとツェナーダイオードの測定が厳しいので、また作る機会があれば電圧範囲をもっと拡大したいと思います。