guiメモ

技術寄りの雑記(予定)

USB-DACを作ってみた

概要

USB-DACを作ってみたので紹介します。筆者の住環境ではヘッドホンでの使用がメインになり、結果としてヘッドホンで使う分にはオーバースペックな物になりましたが、ちゃんと普段使いできる物に仕上がりました。
※筆者はオーディオのオの字も知らないような人間なので、用語や回路設計に関して間違っている箇所があるかもしれません。あらかじめご了承ください。

はじめに

今年に入ったあたりから『定本 トランジスタ回路の設計』などを読みながらアナログ回路(低周波回路)の勉強を少しずつ進めていました。一通り読み終えた後で何かを作ろうと思い、作例として幾つか取り上げられていたオーディオアンプの作成を決めました。当初は凝った回路ではなく、オペアンプにSEPPを接続しただけのシンプルな回路にする予定だったのですが、研究室に置いてあるトランジスタ技術のバックナンバーを隙を見つけては読み漁っている内にどんどん回路が肥大化していきました…

回路設計

今回作成したUSB-DACは主に電源回路とDA変換回路、そしてアンプ回路の3つから構成されています。それぞれ順に紹介します。

電源回路

今回は出力にクソデカカップリングコンデンサを用意するのが面倒だったので両電源で構成するDCアンプとしました。また、両電源は単電源のスイッチング電源に対してレールスプリッタ回路を用いて生成しました。
レールスプリッタは抵抗分圧で半々にした電圧をオペアンプ+SEPPで出力する方式としました。SEPPの各トランジスタにはざっくり電源電圧の半分の電圧が常に印加され、損失が気になるので2パラで構成しています。念には念をということで過電流保護回路も付けています。(Q2,3,6,7)また、出力に大きめの容量のコンデンサを付けていますが、これは正直不要であったかもしれません。このおかげで位相補償が若干複雑になっています。
スイッチング電源を使用する上でノイズの影響が気になるので、シリーズレギュレータ回路により安定化しています。シリーズレギュレータを組むにも様々な回路方式があると思いますが、今回は前述の『定本 トランジスタ回路の設計』にて紹介されているローノイズ電源回路を参考にしました。この回路を両電源で使用する場合、4558系のような出力が反転するオペアンプでは負電源の方で上手く動かないことがあり、これを避けるために適当なダイオードを入れてあげる必要があります。(回路図中のD9,10)
最後に、RCによる遅延回路により電源投入から遅れさせて出力リレーを駆動する回路も入れました。電源が24 Vなのでゲートが破壊されないよう、いい感じに分圧しました。ただ、この構成だと電源OFF時の保護ができないので改善する必要があります。

USB-DACの電源回路部

DA変換回路

DA変換部ではUSBからI2Sへの変換にアリエクで購入したCombo384を使用し、吐き出されるI2S信号をADuM1200を用いて絶縁し、PCM5102Aを用いてDA変換しています。念のため各電源入力部にはフィルタを入れていますが、フィルタの周波数特性的に有効に作用しているかどうかは不明です。
DACの電源は秋月で手に入る低雑音のシリーズレギュレータADP151AUJZ-3.3を使用しました。本稿で紹介しているUSB-DACの後にも一般的なシリーズレギュレータを用いて同様の構成で数台DACを作成しましたが、電源由来と思われるノイズが出力に混入してしまいます。どうやらADP151AUJZ-3.3がキーポイントになってそうです。

USB-DACのDA変換部

アンプ回路

アンプ回路はトランスリニアバイアスによる疑似A級アンプとしました。トランスリニア原理についてはトランジスタ技術2004年10月号、トランスリニアバイアスによるアンプはトランジスタ技術2019年5月号や2019年10月号に大変参考になる記事があり、実際にこれらの記事を参考にしながら作成しました。また、今月発売されたトランジスタ技術2023年1月号にもトランスリニア原理に関する記述があり、参考になると思います。
アンプ部の基板を左右で使いまわしたかったので、オペアンプの出力までをDA変換基板上に実装し、残りを別基板で実装しています。オペアンプによるNFBの配線が長くなり正直良くない設計なので、今後作る機会があれば改善したいところです。

USB-DACのアンプ部

組み立て

当初はいい感じの見た目のアルミケースを使用する予定でしたが、予算が厳しくなったので安価なアルミケースになりました。ケース下部にアンプ部以外の基板を、ケース上部にアンプ部の基板を配置しました。
I2S信号を引き回しているフラットケーブルが長いまま放置しているためか、サンプルレートを上げると正常に動作しなくなります。そのうち直そうと思いながらも特に困ることはなく、半年以上経って今に至ります。(このUSB-DACは4月に作成しています)

アンプ部以外の基板。Combo384絶縁基板(右上)、電源回路(右下)、DA変換回路(左下)
アンプ部については何も考えずに部品配置をしてしまったため、出力部分にあるアイソレータで使用しているインダクタの向きが抵抗にモロに影響しそうな配置になってしまいました。今後の改善点です。
アンプ部の基板

使用感

完成したUSB-DACの写真です。動作確認ではDA変換部のオペアンプにNJM4580DDを使用していましたが、本番用として気まぐれで用意していたMUSES8920Dに交換したら音質が良い意味で大幅に変化しました。本機を製作する前まではオペアンプで音質が変化することについて懐疑的だったので、この現象には正直ショックを受けました。前者のオペアンプがBJT入力であるのに対し後者のオペアンプはFET入力なので、オペアンプ直前にあるフィルタ回路の出力インピーダンスの影響を受けるのでしょうか。BJT入力のMUSES8820あたりとも交換して比較すれば良いかもしれません。

作成したUSB-DACの外観
動作中の写真。電源スイッチ(左上)には白LEDが付いており、動作中に点灯する。(写真では光の関係で消灯しているように見える)

まとめ

本稿ではUSB-DACの製作について説明しました。初めての製作だったので回路設計や基板設計にガバガバな部分が多々ありましたが、最終的には満足するものに仕上がりました。今後作る機会があるとすれば小型化やガバガバな部分の解消が主なポイントとなるでしょう。